なぜ睾丸は2つなのか…片方が不全になっても補えるから?
男性の陰のう(タマ袋)に納まっている精巣(睾丸)は通常、左右1個ずつあります。そこで素朴な質問です。なぜ、精巣は2つあるのでしょうか。精巣は、子孫を残すための大事な精子を作る器官です。片方が外傷などで機能不全になっても、もう片方で補えるからという考えができます。
しかし、発生学的には男性の体は「ヒトの基本形」である女性から分化したものです。だから精巣は2つあるのです。どういうことかといえば、お母さんのお腹で発生した胎児のときは、男の子の精巣と女の子の卵巣は両方とも「生殖腺」と呼ばれる同じものなのです。
それがY染色体から性分化を誘導する遺伝子が発現すると男の子に変化します。妊娠2カ月ごろから生殖腺は精巣へと成長しながら男性ホルモンを作ります。そして妊娠9カ月ごろまでに腹部にある精巣はソケイ部(足の付け根)を通って、陰のう内に下降してくるのです。女の子の場合は、卵巣へと成長して腹部の中で動きません。ですから性器も、女性の大陰唇が閉じたものが陰のうとなり、小陰唇が縫い合わされてペニスとなり、クリトリスが亀頭となるのです。このように女性のお腹の中にある2つの卵巣に相当するのが、男性にぶら下がっている2つの精巣というわけです。