医療者は軽症でも重症でも患者に「希望」を提供することが大切
分子標的薬のオプジーボが登場したように、近年はそれに近いことができるような新しい治療法がどんどん出てきています。たとえばインフルエンザを考えてみても、50年ほど前まではワクチンも急性期治療薬もなく、たくさんの人が亡くなっていましたが、いまは助かるようになりました。抗がん剤にしても、かつては定期的に投与しながら日常生活を送ることができるケースは少なかったのですが、いまは抗がん剤治療を受けながら、それまでと変わらないように仕事をしたり生活を送っている患者さんが当たり前になっています。
長いスパンで見ると、それくらい医学は進歩しているのです。しかも、いまはテクノロジーが急速に進化しているので、これまで何十年もかけて実現させてきたことが、たった1日でできるようになる可能性もゼロではありません。医療者側は常にそうした最新の知識や展望を持ち、患者さんに提示できるようにしておかなければなりません。現状に絶望してしまう患者さんには、いかに希望や光を見せられるかが重要なのです。
残された時間が少ない患者さんの中には、「将来的に実現するであろう医学の進歩を自分は受けられないけれど、自分が亡くなったあとに病理解剖して、同じ病気で苦しんでいる人たちを救うための新たな治療法のヒントを見つけてほしい」と、自身の体を未来の医学のために提供される方がいらっしゃいます。