白血病と闘う能楽師の武田文志さん「医学の進歩を知った」
よくよく考えると、20代までは「自分のための能」、30代に入ると「能のための自分」でした。そして、白血病を境に能と自分の関係はさらに変化しました。そもそも能は「人々の寿命を永らえさせ、幸せを増長させること」を目指す芸。シンプルに言えば「世のため人のため」にあります。私が病気をしたのも罰ではなく、世のため人のために生かせる経験だったと捉えました。これまで以上に人々の寿命を永らえさせ、幸せを増長させるよう活動していくのが私の役目だと感じています。
今も「タシグナ」という白血病の特効薬は飲み続けています。不思議なのは、病後、大体年に1度は3~4日間の休養を余儀なくされるようになったこと。ある年はノロウイルス、またある年はインフルエンザ。昨年は後厄のせいか、声帯ポリープ手術、ギックリ首、インフルと一通り経ました(苦笑い)。年齢もあるのでしょうが、強制的に休養を与えられているようです。方々にご迷惑をおかけして申し訳ないとは思いつつも、悪いことと捉えず、みんなデトックス(解毒・排出)だと受け止めるようになりました。
(聞き手=松永詠美子)