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中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

4割は自己判断で… がん手術4週間遅れで死亡リスク8%上昇

公開日: 更新日:

 医学誌「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」電子版に、がん治療が4週間遅れることで死亡率がどうなるか検証した論文が掲載されました。対象は膀胱がん乳がん、結腸がん、直腸がん、肺がん、子宮頚がん、頭頚部がんの7種類について、治療の遅れを、遅れなかったグループと比較しています。

 結論からいうと、手術は4週間遅れると、死亡リスクを6~8%上昇させていました。手術の前と後に行われる補助化学療法の遅れについても検討。中でも、膀胱がんの術前化学療法の遅れは24%、乳がんの術前化学療法の遅れは28%も死亡リスクを高めています。

 放射線については、頭頚部がんへの根治的放射線療法で9%、子宮頚がんへの術後放射線療法で23%の死亡率アップと報告されました。

 今回の研究は、すでに報告されている研究を厳密な基準でふるいにかけて34件に絞り込んで統合し、詳細に検討したものです。後ろ向き研究とはいえ、有意差が認められていて、信頼性が高い。この結果は、見逃せないでしょう。


 そんな研究結果が出たところに、先ほどの調査です。医療関係者の判断ではなく、自分や友人の意見で治療を中断した人が40人中17人と4割超。このコロナ禍では、治療の遅れが4週間では済まない恐れがあります。たとえば胃がん大腸がんなど早期なら内視鏡で治るのに、1年も手術が遅れたら大変なことになります。

 重ね重ねになりますが、不安ならセカンドオピニオンを取ったり、各地のがん診療拠点病院にある「相談支援室」に相談するといい。相談支援室は、その病院の患者でなくても利用できます。

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