「健康寿命」は個人の主観の平均値 重要なのは老化加速度の格差
ただ老化の個人差は、若いうちはあまり目立たず、仕事を続けるだけの体力や気力が維持されています。だからこそ大抵の人が、最初の定年(60歳)までは、サラリーマンや公務員を続けられるわけです。
ところが還暦を過ぎる頃から、老化速度の違いが徐々に表面化し、年齢を重ねるごとに差が拡大していきます。老化が遅い人は、それだけ長く働き続けることが可能でしょう。定年の大幅延長や廃止など働き方改革が進めば、本人が希望するまで続けられるかもしれません。自営業者の中には90歳を越えても頑張っている人もいます。しかし老化が速い人は、最初の定年が、そのまま本当の定年になってしまいます。
老化速度の違いは、すでに1990年代から一部の研究者の注目を集めていました。しかし当時は、老化は自然な変化と捉えるのが常識でした。個人差は、遺伝や体質などによるもので(生活習慣なども多少は影響するにしても)、どうにもならないものと考えられていたのです。