著者のコラム一覧
天野篤順天堂大学医学部心臓血管外科教授

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

「尿」は心臓病の診断・治療の大切なバロメーターになる

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 また、心臓手術を実施する前には、必ず尿検査を行います。腎臓の状態を確認するのが目的です。とりわけ、ネフローゼ症候群でないかどうかに注意を払います。尿にタンパクがたくさん出てしまうことで血液中のタンパクが減り、低タンパク血症から低アルブミン血症や浮腫が現れる腎臓の病態です。

 低アルブミン血症があると、手術時に生じる傷がくっつきにくくなり、合併症のリスクが増大します。そのため、術前の尿検査で尿中にタンパクが大量に出ている患者さんは、いったん手術を見合わせたり、まずは腎臓内科で治療して腎臓の状態を安定させてから手術を実施する手順を踏みます。心臓手術においても、尿検査が大きな判断材料になっているのです。

 尿中にたくさんの糖分が確認できた場合では、2つのパターンが考えられます。ひとつは糖尿病があってきちんと血糖をコントロールできていないパターンで、こうした患者さんは手術による合併症のリスクが高いため、まず入院して血糖値を安定させてから手術を行うという手順を踏むケースが多くあります。

 もうひとつが糖尿病の治療のためにSGLT2阻害薬を使っているパターンです。SGLT2阻害薬は血中の糖分を尿に排出する作用があり、服用中の患者さんは尿糖の数値が跳ね上がります。ただ、薬で血糖をきちんと管理できているわけですから、手術によるリスクがアップするわけではありません。

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