「がんだったとしても何もしない」…妻にそう宣言した知人から電話があった
Aさんは、「75も過ぎたし……でも、簡単に手術で済めばな。人生はほとんど終わったのだし、どうするかまた考えるよ。うちら夫婦に子供はいないし。CTの結果が出たらまた連絡するよ」と言って、電話を切りました。
CT検査の当日の夜、Aさんから再び電話がありました。
「おーい。CTでは何もなかったってよ。前にかかった肺炎の影が収束して、濃く見えただけだったって」
ただAさんは、CT検査の結果を告げられた診察の時に、担当医にこう詰め寄ったといいます。
「何もなかった? でも、先生はがんかもしれないって言ったよね」
何もなくて良かったはずなのに、不満そうに話すのです。
「がんかもしれないと言われたら、患者はきっとがんだろうと思うじゃないか。この1カ月、いろいろ考えたのは何だったのよ。まったく、あの医者は……」
私は「良かったじゃない。何もなかった。患者にとって、それが一番。担当医は心配してくれてCTを撮ったのよ」と答えました。それでも、Aさんは不満そうな口ぶりでしたが、何もなかったからこそ漏らせる言葉だと思うのです。