認知症を発症したら地域の活動はやめるべきでしょうか?
「父が受け持っていた町内会長の役職を辞めさせるべきか悩んでいます。本人はまだ続けたいと話していて……」
以前、認知症と診断されたばかりの父親と一緒に暮らす娘さんから、こんな相談を受けたことがあります。地域活動への参加は、定年退職を迎えて自宅で過ごす時間が増えた高齢者にとって、他者とのコミュニケーションを取れる場になり、閉じこもりやうつを抑制させる効果があります。中でも町内会は、近隣住民との交流だけでなく町づくりに携われ、やりがいを感じながら取り組まれている方も多いのではないでしょうか。
実際、この娘さんのように「認知症の親が町内会で相談された内容を忘れてしまい、大きな問題になるくらいなら早めに役職から身を引いた方がよいのでは」と考えるご家族は少なくありません。ただ、認知症を発症したからといって、突然、何もかもできなくなるわけではありません。認知症の初期の段階なら、やり慣れた仕事であればある程度はこなせます。また、維持されている能力を使い続けることは、認知症の進行予防にもつながります。
まずは、町内会の役員の方々に「父親が認知症と診断され、少しずつ物忘れの症状が目立ち始めたが、本人は町内会長を続けたいと思っている」と、相談してください。周囲の人も、これまでと違った行動や発言が見られた際に認知症によるものと知っておくと、戸惑いや混乱が少なく済み、受け入れがしやすくなります。