陽子線でがんを狙い撃つ(2)利点は「止まる」と「止まったところで最大パワー」
兵庫県立粒子線医療センターで巨大肝がんの陽子線治療を受けた72歳男性は、最大径10センチ以上あったがんが、治療2カ月後には手術で除去したかのように縮小。腫瘍マーカーPIVKA-Ⅱ(ピブカ・ツー=肝がん細胞が多いほど高値)は、治療前8万4600から、治療2カ月後4060、そして1年半後には16にまで減少した。
73歳の早期肺がんの男性は肺機能が悪く在宅酸素療養中のため、手術が非適用。陽子線治療を受け、肺がんの消失が見られた(名古屋西部医療センター症例)。
不破医師は南東北がん陽子線治療センター長時代、ステージⅡ、Ⅲの食道がんへのX線と陽子線の治療成績(どちらも薬物療法と併用)を比較した論文を発表している。それによると、X線では完全奏効率(がんの兆候が全てなくなること)が、国立がん研究センター66%、東北大学68%、厚労省がん研究助成金指定研究「JCOG9906」62%。それに対し、南東北がん陽子線治療センターの陽子線の成績では74%。なお、国立がん研究センター、東北大学、「JCOG9906」は、がんが食道周囲臓器に浸潤しているT4の患者(がんの深さを示す値で最も深い)は除外しているが、南東北がん陽子線治療センターでは含んでいる。
「単純な比較はできませんが、陽子線により心臓への線量が減らせたことが貢献しているのではと考えています」(つづく)