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中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

リンパ腫の免疫療法「CAR-T療法」の劇的効果と超高額薬価

公開日: 更新日:

 体外で増殖させてより強化させてから、点滴で体に戻します。この増殖したCAR-T細胞は、血流にのって体の隅々まで循環してがん細胞を見つけると、プログラムされた通りがん細胞に結合し、がん細胞を殺すように作用するのです。これによって、特定のがん細胞が効率的に除去されます。

 前述した通り、この治療法は抗がん剤が効かない血液がんに有効です。主な薬剤はキムリア、イエスカルタ、ブレヤンジなどで、特に大細胞性B細胞リンパ腫や急性リンパ性白血病にキムリアが最も使われます。

 CAR-T細胞がターゲットとする抗原は、ほとんどのリンパ性白血病やB細胞リンパ腫の表面に発現しているため、この治療法はとても効果的です。「私は元気です。予後は素晴らしいです」と興奮気味に投稿したくなる気持ちもよく分かります。

 ネックは医療費の高さです。日本でも保険適用されていますが、CAR-T細胞そのものの薬価は3000万円を超えます。入院で抗がん剤と組み合わせて行われ、京大病院の場合、3500万~4370万円。3割負担で1000万円を上回ります。

 保険適用の治療や処置などは高額療養費制度で自己負担限度までの支払いとなりますが、食事代や差額ベッド代などは自費ですから、入院日数分だけかかります。同大の場合、入院期間は平均41日、最大98日でした。その負担も決して小さくありません。

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