命を延ばす薬(4)心不全に対するACE阻害薬…延命効果は41日?
高血圧の治療薬のひとつに「ACE阻害薬」という薬があります。ACEとはアンジオテンシン変換酵素と呼ばれる体内酵素のことです。ACEは血圧を上昇させる体内物質であるアンジオテンシンⅡの産生を促し、血圧の上昇を引き起こします。ACE阻害薬は、ACEの働きを抑えることで、アンジオテンシンⅡの産生を抑制し、血圧の上昇を抑える効果が期待できるのです。そのため、高血圧の治療薬として広く用いられてきました。
アンジオテンシンⅡはまた、体内の水分排泄を抑えたり、血管を収縮させたりすることで、心臓のポンプ機能に負担をかけることが知られています。心臓のポンプ機能が低下した状態を心不全と呼びますが、ACE阻害薬は心不全の治療薬としても用いられてきました。
心筋梗塞など心臓病の発症リスクが高い9297人を対象とした臨床試験では、ACE阻害薬である「ラミプリル」(日本では未承認)を投与することで、プラセボの投与と比べて、心筋梗塞、脳卒中、および心臓病による死亡が22%、統計学的にも有意に低下しました。また、心不全を有する2569人を対象とした臨床試験では、ACE阻害薬である「エナラプリル」を投与することで、プラセボ投与と比べて、死亡リスクが16%、統計学的にも有意に低下しました。