命を延ばす薬(4)心不全に対するACE阻害薬…延命効果は41日?
さらに、臨床試験3研究を統合解析した研究論文によれば、心不全患者に対してACE阻害薬を投与すると、プラセボを投与した場合と比べて、平均で41日間の延命効果が得られました。なお、このデータは3年間の調査期間に基づく解析結果であり、実際の寿命を踏まえると、より長い延命効果が得られるものと考えられます。
もし仮に、調査期間と延命効果が比例するのであれば、30年間で410日の延命効果が得られることになります。ただし、この延命効果の見積もりは、単純計算に基づく筆者の仮説にすぎません。死亡リスクに与える要因は多岐にわたるため、実際の延命日数の見積もりには大きな不確実性が伴います。ACE阻害薬を服用しても、大きな延命が得られない人もいる一方、平均的な効果よりも長い延命が得られる人もいることでしょう。
とはいえ、心不全患者や高血圧患者におけるACE阻害薬の有効性は決して小さいものではありません。近年では、心不全に効果が期待できるとされる薬が数多く登場しています。そのような中でも、ACE阻害薬はβ遮断薬と同様に、心不全治療に対する標準的な治療薬としての役割を担っています。 =おわり