歯の治療を受けるならクスリに注意(4)【ステロイド剤】感染やショック症状を起こすリスクあり
「ステロイド剤」を長期服用している人も、歯科治療では注意が必要になる。ステロイド剤は、副腎で作られる副腎皮質ホルモンという成分を配合している薬のことで、体の中の炎症を抑えたり、免疫力を抑制する作用があり、気管支喘息や関節リウマチなど、アレルギー性疾患、自己免疫疾患、血液疾患といったさまざまな病気の治療に使われている。
「炎症」というのは、体内に侵入した細菌やウイルスなどの病原体と、白血球などの免疫細胞が闘っている状態だ。ステロイド剤には抗炎症作用と抗免疫作用があるため、長期にわたって服用していると細菌感染が起きやすい=易感染性の状態になる。小林歯科医院院長の小林友貴氏は言う。
「われわれの口腔内には400種類近い細菌が存在していて、その数は100億を超えるといわれています。そのため、ステロイド剤を長期服用している患者さんは歯周病や虫歯が悪化しやすくなったり、抜歯や手術といった外科的処置を受けた後は傷が治りにくくなり、腫れたり膿んだりしやすい状態になります。また、骨粗しょう症治療薬のビスホスホネートなどを併用している場合、口腔内細菌の感染によって顎の痛み、腫れ、化膿といった症状が出る『顎骨壊死』を起こしやすくなるという報告もあります」