クリエイティブディレクター山﨑晴太郎氏に聞く 忙しい現代人の「心の余白」の作り方
「気づけば今日もこんな時間…」。
仕事や家事育児など、日々に忙殺されながら生きる現代人は、心の余裕がなくなりがちです。
東京五輪の表彰式やグッドデザイン金賞の受賞など、社会問題をデザインの力で解決するクリエイティブディレクターで、3児の父親である山﨑晴太郎さん(41)に、もっと自分らしく生きるためのヒントを伺いました。
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──『余白思考』(日経BP)を出版した理由を教えてください。
今の社会や世界全体で「余白」がなくなってきていると思います。その原因として、すべての物事に対して解像度が上がりすぎているのではないでしょうか。
例えば、以前LGBTQ+問題は一定の曖昧さを持ったまま存在していましたが、現在は区分けられ “ラベル”が貼られて基準を明確にしすぎている部分もあると思うのです。多様性を認める意味なら「善」ですが、それで生きづらくなった側面もあるでしょう。
働き方でも余白は失われてきています。とくにリモート会議は、時間的・感情的にも詰め込みすぎです。コロナ前は、こんなに多くの打ち合わせはなかったですよね。すぐに始められてすぐに終了できるため、30分単位で隙間なく予定が組めてしまう。
僕もたまに、1日12件とかのリモート会議があって、自分のスケジュールを見て正直驚いています。僕はいつ、トイレに行けばいいんだろうって…(笑)。
──アーティストやデザイナー、会社経営以外にも様々な仕事をされていますが、日々の余白はどうやって捻出していますか。
余白は意識しないと作れません。僕の場合は、余白を確保するために、スケジュールを工夫しています。水曜日は会議などで忙しいけれど、その代わりに火曜日や木曜日は制作に時間を充てたり、まとまった時間をつくるようにしています。
すべての曜日を同じペースで万遍なく予定で埋め尽くすと仕事の時間に余白がなくなるため、意識的にメリハリをつけています。
また余白を作るためには、無心になって、思考をクリアにするのも必要不可欠です。サウナや筋トレでリセットするのも良いですが、僕は最近、ノイズキャンセリングイヤホンにハマっています。
新幹線の移動では、周囲のノイズが消えた状態で、新横浜〜名古屋間の街並みをぼーっと眺めています。一個一個の家に、どんな人が住んでいるか、どんな生活を営んでいるか、想像をめぐらせるのが楽しいんですよね。
イメージとしては、お風呂に頭まで潜る感覚と同じで、自分と社会の間に何か余白として膜を張る行為ができると、余計な思考をそぎ落とせると思っています。