大出館(栃木・塩原温泉)つかって、飲んで、食べて…街全体の「温泉力」を満喫
グルメ情報誌「おとなの週末」(講談社ビーシー)は、おいしいものを軸に街や旅などの情報も幅広くカバーする。取材陣たちは、それぞれにお気に入りの旅プランがあるという。そこで、「おとなの週末」メンバーが厳選する「湯とメシの旅」に繰り出してみてはどうか。「至福の日帰り」&「癒やしの1泊2日」の条件に合わせて、それぞれ2つのプランを用意した。さあ、出発!
ああ、この湯につかりたい──。ひと目見て、そう思ったのは、ライター本郷明美。さえぎるものなく眺められる山々と、やや緑がかった乳白色の湯。つかれば「はぁ」と思わず声が出て、熱めの湯は疲れた体をなだめてくれるようだ。それにしても神秘的な湯の色。名を「五色の湯」という。
「お湯の色は毎日同じことがないんです。季節によって違いますし、晴れるとエメラルドグリーンや乳白色、雨が降ると灰色だったり」とは「大出館」の若女将・山本順子さん。「どうぞ飲んでみてください。胃腸にいいんですよ」とも。
口に含めば、硫黄のにおい、ミネラル分を感じる。希望する宿泊客の朝食に出すという、温泉で炊いた粥もいただいてみた。米の甘みとミネラル分が溶け合い、しみじみとおいしい。お腹が温まり、体の隅々に温泉が染み渡る。体の外からそして内から、温泉力、まるっといただいた。こちらにはほかに鉄分を含む、珍しい黒湯の「墨の湯」もある。やはり飲める温泉だ。
塩原温泉は1200年以上の歴史を持ち、約150の源泉があるという。街中、「湯だらけ」。手の温泉「指湯」や、足湯の回廊「湯っ歩の里」まで。新湯地区では、岩肌から今も水蒸気が噴き出し、硫黄臭が漂う。これぞ秘湯の風情だ。
その中にはぽつんと共同浴場「中の湯」がある。脱衣場とこぢんまりとした湯船の素朴な浴場。何人もの湯治客がつかってきたに違いない。なめらかな乳白色の湯が心地よかった。
「中の湯」近くの「湯荘白樺」では、勢いよく噴き出すあの源泉の熱で茹で上げられた「温泉卵」をいただける。缶ビールも購入。とろとろの白身の中から現れる黄身は美しく、味がとても濃い。温泉につかって、温泉卵を食べ、ビールをぷはっ。なんという幸せ!