「雪夢往来」木内昇著
「雪夢往来」木内昇著
寛永の頃、越後国の儀三治(ぎそうじ)は流行の俳諧に凝って、「牧之」という俳号を名乗っていた。江戸に行商に行って、人びとが越後国についてあまりにも知らないことに落胆する。柳橋の書塾を訪れたとき、越後ではどれくらい雪が積もるか聞かれて、「高さが一丈ほどになりましょうか」と答えたが、ほら吹きだと思われてしまった。
越後の話を書いたら江戸の者に面白がってもらえるかもしれないと思いつき、山東京伝に書肆を紹介してほしいと頼む。雪が戸口を突き破って家になだれこむ様子など、越後の冬を描いた絵に、京伝は目を奪われる。
「北越雪譜」を著して越後の風俗などを紹介した鈴木牧之を描く時代小説。
(新潮社 2200円)