浅草「水口」でわさび醤油かけた即席鉄火丼をかっ込みながら菊正をグビリの至福
今ごろ、浅草かよと思われる読者も多いかと思いますが、いけ好かない言い方ですが、アタシら山の手生まれの人間にとって、浅草は近いようで遠い街。というか、子供の頃からずーっと灯台下暗しというような街なのです。
アタシらにとっての繁華街は銀座、渋谷、新宿。浅草は、東京物語ではないけれど、地方から出てきた親戚を連れて行くところだった。そんな浅草を面白いと思うようになるのは一人で酒場に行けるようになってから。半村良さんの「浅草案内」に感化されたからなのだ。
そんな浅草が、今では国際的観光地となっている。子供の頃はどんなに賑やかでもモノクロのイメージだったが、ここ数年でカラフルになり総天然色タウンに様変わりした。それは言うまでもなく各国からの外国人観光客が大量に流れ込んだからである。そんなわけでアタシの愛する昭和酒場にも外国人が来ているのか確かめに行ったのである。
食事処「水口」は浅草六区通りからちょっと入った入り組んだ場所にある。いまだに一発で店にたどり着いたことはない。朝10時に開店し、通しで午後8時半まで。だから昼飲み大歓迎。昭和25年創業。定食屋としてスタートし、おかずをつまみに飲める食堂酒場として愛され、すでに70年以上がたつ。今日はここで昼間から一杯やろうって寸法。早速サッポロ赤星大瓶(690円)とマグロブツ(800円=写真)。このブツが素晴らしい。赤身から中トロ・大トロの切り落としが、ドサッと無造作に盛られている。
貧乏性のアタシはこれだけでは贅沢過ぎるので、つい半ライス(150円)を頼んでしまう。箸休めにコロッケ(450円)も注文。揚げたてのコロッケほどうまいものはない……かな。ソースをたっぷりかけガブリ。アッツ! 口中の皮がめくれるほどの熱さ。そこに赤星をんぐんぐんぐ。く~、たまらん。食堂酒場はこれができるからいい。2人掛けのテーブル席には常連らしきおじいちゃんが日本酒をやりながらマグロブツとカレーライスだ。その組み合わせに驚いているようではまだまだ修業が足りないね。