忍者修行に行ってみた(前編)「エイッ、ヤッ、トー、ハッ」の気合が大事…まずは「肚」を鍛えよ
相手を圧倒し、気おされない心と感覚を養う
習志野師範は忍道の陰忍5段保持者。陰忍とは実践的な忍術を指す。当然、陰があれば陽もあって、陽忍は忍術を学術的アプローチで学ぶこと。日刊ゲンダイ記者が参加したのは陰忍の教室だ。
九字切りを終え、次は「気合がけ」。相手に向かって腹の底から「エイッ、ヤッ、トー、ハッ」と発声する。相手を圧倒し、気おされない心と感覚を養うのが狙いだ。ヤクザやチンピラが喧嘩相手に「なんだゴラァァ!」と凄むアレに似ている。気合はバカにできない。
こうした「有声気合」もあれば、「無声気合」もある。文字通り声を発さない「気合」なのだが、息を止める分、頭に血が上りクラクラする。「下腹にギューッと重い圧力をとどめるイメージをつくることで、勇気や決断力をつかさどる『肚』を鍛錬する」(習志野師範)のだとか。部屋の中でも静かにできる修行法だが、血圧が高い人にはオススメしない。
「肚」を鍛える気合には、腕を使ったバージョンも。両手をバンザイよりもやや低い位置から、円を描くように股関節めがけて振り下ろす。ぶつかるギリギリで腕を止め、これも瞬間的に下腹にグーッと力を込める。体重をうまく使えていれば、上げた両腕を相手から力いっぱい押さえられていても簡単に振り下ろすことができる。力に頼らずに腕をスコンと下ろすのがコツだ。「腕を振り下ろす時は、突然、赤ちゃんをポンと放り投げられて優しくキャッチできるくらいのブレーキ感」(習志野師範)が大切なのだが、なかなかムツカしい。
てっきり手裏剣を使った稽古でもやるのかと思いきや、基礎作りの地味なメニューが並ぶ。しかし、修行に近道はない。「肚」を鍛え呼吸法を身につけると、驚くべき技を習得できるようになるという。
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(取材・文=高月太樹/日刊ゲンダイ)