シブイ!「根津の甚八」は築120年以上の路地裏の隠れ家、名物“クリチたまりしょう油漬け”から
第66回 根津(文京区)
2週前の動坂食堂の回を読んでくださった映画好きの方からご連絡をいただいた。
それは昔、動坂食堂の前に映画館があった、というもの。すてきな情報ありがとうございました。アタシの街にもちょっと歩けば映画館が2軒あったが、今ではでかいスーパーになっている。
映画館に限らず、どこの商店街でも個人商店は激減。スーパー、コンビニ、大手外食店が幅を利かし街の無個性化に邁進している。老朽化する店舗を修復して維持継続するより、手っ取り早く更地にして貸してしまう方が楽だという商店主の気持ちはわからなくはない。が、借り手さえいればどんな業種、業態だろうと貸してしまうというのもねえ~。そんなわけで、いまだに独自の文化が残る谷根千通いに精を出すアタシです。
今回は不忍通りから横道の忍小通りに入り根津を目指すことに。忍小と書いて「しのぶしょう」。小さい不忍通りというわけではない。忍岡小学校がある通りということでその名称になった。この通りに一歩入ると寺が多いことに気が付く。東大医学部の古くて大きな建物があり、森閑とした雰囲気に包まれる。怖がりのアタシは夜一人では歩きたくないな。そんなことを思いつつ根津小学校と表示された信号から裏の路地に入る。左に曲がると暗い路地の先にポツンと赤提灯が見える。そこが今日の目的店「根津の甚八」。
その外観はまさに江戸の居酒屋。シブイ! 路地裏の隠れ家といった感じ。おじけづくアタシは自らを鼓舞し戸を開ける。するとそこは想像した通りの渋過ぎる居酒屋だった。
入ってすぐに6、7人掛けの年季が入ったL字形木製カウンター。奥にはテーブルがいくつか置かれた座敷。さらに奥が調理場だ。カウンターの真ん中に座ったアタシはさぞや頑固で偏屈な親父が店主なんだろうと戦々恐々と奥をのぞき込む。