カルロス・ゴーン氏に迫るフランス当局の"包囲網" ヒズボラとイスラエル間で高まる緊張が影響
しかし昨年10月、レバノン政府はゴーン元会長に対し、現在住んでいる豪邸からの退去命令を出した。この邸宅はゴーン元会長が自らの保養の目的で日産自動車が購入したもので、レバノンの首都ベイルートの閑静な丘の上にある住宅・商業地区にあり、街路樹が整然と立ち並び、周辺にはオスマン帝国やフランス様式の高級住宅も少なくない。ABCモールなど大規模な商業施設とともに、ブランドものの高級衣料品を売るブティックも数多くあり、東京でいえば、表参道のようなところだ。ゴーン元会長に対する立ち退き命令が出されたということは、元会長のレバノン政界や社会における影響力の低下を如実に物語る。手持ち資産が目減りして、レバノン政界に対する工作が不可能になりつつあることも表している。
■レバノン国民の8割がハマスによるイスラエル奇襲を支持
冒頭で述べたように、現在レバノンはイスラエルと緊張状態にある。イスラエル軍のダニエル・ハガリ報道官は2月3日、ヒズボラとの全面戦争を辞さない構えを示した。イスラエルが懸念するのはハマスのガザでの戦争に呼応してヒズボラがイスラエルに攻撃をしかけることだ。2月5日、レバノンのアブダッラー・ブハビーブ外相は、ハマスの奇襲攻撃があった10月初旬以来、イスラエルのレバノン南部への攻撃によっておよそ10万人が国内避難民になったことを明らかにした。2006年にイスラエルとヒズボラが本格的戦闘を行って以来のイスラエルによる最大規模の攻撃になり、ブハビーブ外相の発言があった2月5日までにヒズボラの戦闘員182人が殺害されたほか、民間人30人が犠牲になっている。