カルロス・ゴーン氏に迫るフランス当局の"包囲網" ヒズボラとイスラエル間で高まる緊張が影響
レバノンでは80%の人々がハマスによる10月7日の奇襲攻撃を支持し、また32%の人々がヒズボラのイスラエルへの姿勢は手ぬるいと感じている(『アル・アフバル』紙の世論調査)。パレスチナ問題におけるイスラエルやアメリカによる「不正義」はアラブ諸国の人々に広く共有されていることは疑いがない。
不正義への怒りが多くのレバノン人の間で共有される中で、不正を働いたとされる人物への同情や共感が集まるとは考えにくい。世論の多くがゴーン元会長への正当な法的な裁きを望んでいることは明らかだろう。レバノンでは2019年に金融システムが崩壊し、外貨準備が枯渇、現地通貨が暴落して国民の貧困が深刻になった。そのような中で不正な手段で蓄財したと考えられいるゴーン元会長に対する同情が集まるはずがない。レバノン国内でゴーン元会長の裁判を行い、有罪になった場合は、国際受刑者移送という形で海外へ身柄引き渡しを行うこともあり得る。レバノン政府に身柄引き渡しを迫る、フランス司法当局による"包囲網"が迫りつつあると考えるべきだろう。