万博協会は「責任者がどこにもいない」寄り合い所帯…会場建設現場の危機感が共有されず
「建設業界では『油断と焦り』が労働災害につながるといわれます。パビリオンの工期も会場内のインフラ整備も遅れているので、ただただ『焦り』しかありません。すでに設計・施工の関係者は夜通しの作業を強いられています。無理やり来年4月開幕へ突き進んでも、作業員らの事故が起きかねず、得るところは何もない。半年は開幕を延期すべきですが、こうした危機感が万博協会などに共有されている様子はありません」
万博協会は国や自治体、企業などから職員が出向している「寄り合い所帯」。「カネと利権」にまみれた実態が明らかになった東京五輪の組織委員会と似たような構成だ。
「協会の人と会う機会があれば、私からも、建設業者の方からも懸念を伝えています。しかし正直なところ、責任者の不在を痛感せざるを得ません。その場で協会側の人が真摯に話を受け止めてくれたとしても、それを持って行く先がない。協会側の窓口は用意されているのですが、会場の建築や設計、施工に関わる責任者及び意思決定者が誰なのか分からない。会場全体を統括するはずのプロデューサーの責任も不明です。会場準備が遅れているのに、仕事の順番を管理する責任者も出てこない。恐らく、協会側は自分たちが何をどこまで判断していいのか分からないのでしょう」(前出の1級建築士)
1970年の大阪万博では、会場建設に関わった17人が殉職した。同じ歴史を繰り返さない責任は主催側にある。