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児玉一希株式会社RES 代表取締役

1991年生まれ。東京都立川市出身。東京都立大学(旧首都大学東京)卒業後、2014年リクルートグループへ入社。2016年に転職をきっかけに金融教育業に携わり、自身も投資家に。仕事をしながら無理なくできる長期投資スタイルを確立し、経営者・上場企業役員・医師など指導した個人投資家は2万名に及ぶ。運営するYouTubeチャンネルは2021年9月の開設から2年半で登録者数20万人に到達。大型株のスイング、グロース株投資、デイトレ、FX、日経先物、不動産REITなど、投資について幅広い見識を持ちつつ、初心者にすすも分かりやすい説明と指導方法が好評を得ている。YouTubeの実績に加え、2023年3月に出版した初の著書『株式投資2年生の教科書』(出版:Gakken)や2024年3月『高配当10倍株投資 「高利回り×高成長」で資産を4倍速で増やす! 』がある。YouTubeチャンネル「Trade Labo【高配当・増配株チャンネル】」:登録者数21.7万人。(2024年5月17日現在)

経済アナリストの森永康平氏「円安を止めるために『金利を上げるべき』と主張する人がいるのは問題」

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日本経済の行方がもたらすマーケットへの影響は…

 ――追加利上げとなると株式はじめマーケットにもあまり良い影響はないということでしょうか。

 やはり良くないですよね。ただ投資家の目線と一般人の経済目線というのは、分離して考えたほうがいいように思います。というのも今年3月に私の事をメディアで見ている方から、最近の株価はおかしい、日経平均が4万円を超えても私たちの生活は一向に良くならないとクレームが寄せられたんです。株価と実体経済が乖離しているのはおかしいというのです。そもそも日経平均というのは上積みの企業の業績に対する期待値ですよね。日本には数百万という企業があって、そのうちの3800社が上場していて、さらにその上積みの225社の業績に対して投資家が市場でつけた株価が日経平均です。

 なぜクレームがあるのか。彼らから見た実体経済とは、例えば商店街がシャッター街になっちゃったとか、タクシーの運転手さんが暇そうだとか、街中の様子のことで、株価と乖離しているといっても比べているものが全然違います。そこを混合している人が多い。

 もっというと日経平均採用銘柄は、海外売上高比率が高い企業がたくさんある。仮に日本経済が悪化しても、海外で稼いでおけば会社全体としては増収増益ということは普通に起こり得ることです。そう考えると、日本経済と株価の判断については分けて考えた方がいいと思います。

 もし前述したように金融の政策リスクが顕在化してしまったら、日本経済は悪化すると私は断言しますが、だから株価も暴落するというようなシナリオには簡単には繋がらないということです。

■アメリカの景気動向と利上げの見通しについて

 ――アメリカの 4月の消費者物価指数は前年比3.4%の上昇でした。アメリカの経済状況、金融政策によってはグローバル企業にとっても影響はありそうですか。

 アメリカは1年間という短期間で金利を5%に上げたわけですから、経済は徐々に弱くなり、米国の中央銀行にあたるFRBがタイミングをみて利下げを行い、結果的に日米金利差が縮小して円安は止まるだろうと私はシンプルに考えていたんです。

 想像以上にアメリカの経済が強く、グローバルで稼いでいる日本企業はその恩恵を受けてかなり業績が上がった。しかし経済データを見る限り、いよいよアメリカの景気にも少し陰りが差してきたようです。

 その理由の一つは、アメリカの「強制貯蓄」がなくなってきたということです。コロナ禍対策で給付金のばら撒きをやりましたが、ロックダウンで使い道がなく、アメリカ国民は強制的に貯蓄が貯まったんです。だからインフレ率が一時は約9%まで上がりましたが、物価高でも強い消費を維持することができたのです。

 現在のアメリカのインフレ率は3%程度ですが、強制貯蓄がなくなったいま、消費がどこまで耐えられるのか。最近の経済指標を見ると徐々に悪化し始めて、FRBの利下げは年内1回という予想から、9月と12月の年2回に増えています。

 以上のことからも日本の株価に関して言えば、日銀の政策以上に米国の経済動向の方が影響は大きいといえます。

■経済指標を踏まえたうえで実体経済を知る重要さ

 ――先日アメリカのロサンゼルスへ行きましたが、人気野球チームドジャースのスタジアムのすぐ近くにはホームレス街が多数あり、中心街もかなりシャッターが閉まっていました。数字が示すほど景気の良さは感じませんでした。

 経済指標って万全ではないんですよね。私はアナリストであるという立場を活用して、投資で悩んでいる企業の社長やCFOとの面談に伺ったり、工場見学に行くこともありました。現場を知らないとわからないことが多い。足を使ってリアルな情報を稼ぐことは大事だと思いますね。児玉さんのような投資家の皆さんは業績の分析についてはベテランだと思いますので、さらに一歩先へいくならば、足を使った調査をやってみると意外とリターンの源泉を見つけることもあるかもしれません。

■個別銘柄の選び方は有名投資家も素人も同じ。やはり自分の好きなことに投資をするのは基本

 ――森永さんオススメの個人にもできる、経済の実体を掴む方法や銘柄選びについて教えていただけますか。

 現場を見ることが重要という意味からも、やっぱり好きなものを投資対象にするのが良いです。ディズニーランドが大好きな投資家の友達はディズニーランドやディズニーシーに何度も行きますから視点が鋭い。レストランのメニューの変化やパレードの微妙な質の変化にも気づくんですよ。決算書だけを読んでいてもそこまではわからないですよね。

 昔から、ウォーレン・バフェットや有名な投資家たちも、自分の知らないものに投資するのは非常に危険であると言っています。AIブームで半導体が注目されていますが「そもそも半導体ってなんだっけ」「東京エレクトロンとNVIDIAは同じことやっているんですか?」と聞かれると意外と答えられないことが多い。これは投資の原則に基づくと危ないですよ。知らない銘柄に投資する時は、そのリスクを踏まえるべきです。インフルエンサーがすすめていたから買うのは投資ではなく、投機に近いですよね。

(聞き手=児玉一希/投資家)

※「Trade Labo」でも動画で詳しく解説しています。

 後編はアメリカ大統領選を前に森永康平さんの考えるトランプ再選後の世界とマーケットへの影響について取り上げます。

▽森永康平(株式会社マネネCEO/経済アナリスト) 証券会社や運用会社にてアナリスト、ストラテジストとして日本の中小型株式や新興国経済のリサーチ業務に従事。さらにインドネシア、台湾などアジア各国にて新規事業の立ち上げや法人設立を経験し、事業責任者やCEOを歴任。2018年6月には、金融教育ベンチャーのマネネを創業。現在は国内外のベンチャー企業の経営にも参画。 著書は『スタグフレーションの時代』(宝島社新書)や父・森永卓郎氏との共著『親子ゼニ問答』(角川新書)など多数。YouTubeチャンネルは「森永康平のリアル経済学」「森永康平のビズアップチャンネル」。

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