自社株買いは「割安株」のシグナル 企業の位置づけが「株主還元策」から「投資の一形態」に
日本企業の自社株買いが増加しているが、その目的もいま大きく変わろうとしている。
言うまでもなく、自社株買いは市場から自社株を直接買い戻すこと。それを消却することによって1株あたりの価値が高まるから、自社株買いは株主還元策であると位置づけられてきた。
ところが最近は、事業投資やM&Aと同じように「投資の一形態」とみなす企業が増えているのだ。例えば、日立製作所は資産売却で得た資金の使途を決める際、成長投資と自社株買いのどちらが投下資本利益率の改善効果が大きいかを比較する。またソニーグループは2027年3月期までの中期経営計画で、M&Aなどの戦略投資枠1.8兆円の対象に「機動的な自社株買い」を含めた。
「株主のため」だった自社株買いが、「自社のため」に変貌しつつあるのだ。
こうした動きは米国では早くから積極的で、主だった企業が自社株買いをするのは当たり前になっている。
米国のアップルは24年5月、米史上最大規模となる1100億ドル(約17兆円)の自社株買い計画を発表。これによって同社の10年間の自社株買いは総額6600億ドル、約80兆円にも達している。これが同社の時価総額が史上初めて3兆ドルを突破する原動力となった。