休むと不安…稀勢の里を蝕む「稽古依存症」と先代の呪縛
「1日でも稽古を休むと、不安になるんです」
横綱稀勢の里(31)が、親しい関係者にこう漏らしているという。
3月場所から続く左上腕と左胸の筋肉損傷の影響で、2場所連続途中休場。先場所はさらに左足関節の靱帯も痛めた。横綱審議委員会からも、「9月場所は休んで治療と稽古に専念を」と、休場勧告までされた。
本来なら大事を取るべき状態なのだが、7月31日から早くも稽古を再開。足首のケガを抱えながら四股を踏んでいるのだから、周囲が懸念することしきりなのだ。
スポーツ心理学者の児玉光雄氏(追手門学院大学客員教授)が言う。
「私が師事したスポーツ心理学者のジム・レーヤー博士は、これを『オーバートレーニング』と分類しました。トレーニングは強度などによって数段階に分けられ、その中で一番危険なのがこのオーバートレーニングです。練習をしていないと不安になるという、まさに今の稀勢の里の状況そのもので、結果に過剰反応する選手がなりやすい。彼らは練習すれば成績が上がると信じているが、猛練習が必ずしも結果に結びつくとは限らない。結果が出ないと『これだけやってるのに……』と、ますます不安になる。こうなるとケガのリスクも増えるし、心の病にもなりかねません」