元近鉄の天理・中村監督に聞く “プロ経験者”の高校野球論
――普段の指導は厳しいですか?
「めったに褒めません。大声も出すし、名指しで叱るときもあるけど、それをフォローしてくれるコーチがいます。自分にも得意、不得意分野があるから、プロアマ関係なく僕よりたけた人がチーム内にいるのに、お願いしないのはもったいない。出しゃばらずお任せして、何かあったら監督の責任。ただ、スタッフにもかなり厳しく言います。『(指導を)任されたなら自分がやりたいことをやりなさい』と。『どうしたらいいですか』と僕に聞いてきたら任せた意味がないし、どういう意図でやったのかを答えられるかで、指導力が上がるかどうかが決まる」
■「責任を持たせる行動も勉強させたい」
――コーチ陣は何人ですか?
「内野守備担当の先輩で大西卓也先生、外野守備担当、僕の教え子で幹事兼内野守備コーチ、投手コーチ、トレーニングコーチ。僕を入れて6人です。コーチに任せているから、逆に僕の仕事がない(笑い)。雑誌のコラムか何かで、アメリカの実業家のインタビューが載っていて、社長に質問したら『それに関しては誰々さんに聞いてください』と言われ、違う話題を振ると『その話題は誰々さんに』と言われたと。『じゃあ、あなたは何をしているんですか』と聞くと『何もしてません』と。『では、これだけ会社が大きくなった秘訣は?』と聞くと、『あるとしたら、自分の周りにそれだけの人が集まってくれるのが私の能力かもしれない』とあった。僕もそれを目指しているんです。僕が(前監督で現総監督の)橋本(武徳)先生の下でやってきて、縛られながら野球をした記憶がなかったし、プロ入り後もなかった。そういう中で責任を持たせる行動も勉強させたい。僕は橋本先生の野球が高校生に合っていると思う。例えば算数で、日本は『2+2=?』という問題で『4』と答えさせるけど、海外の問題は『○+△=4』で『1+3』『2+2』といろんな選択肢と正解を答えさせる。そういう発想が野球にも欲しいですよね」