嶺里俊介(作家)
3月×日 光文三賞授賞式。日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作「午前零時の評議室」(光文社 2090円)は、裁判員裁判をテーマにした社会派作品。
一般人である裁判員は、ややもすると感情に流されてしまう。その評決に対し裁判官は対抗できない。無罪判決後に犯行を自供された事件に憤りを覚えた裁判官が、その裁判員たちを集めて、「全員で正解を導き出せなければ死」を迫る本格ミステリー。
この重厚な作品を執筆した衣刀信吾さんは、実は日本弁護士連合会(日弁連)副会長。さぞかし貫禄がある人なのだろうなと思いきや、実際にお会いしてみたら気さくで腰の低い人でした。内なる熱い意欲を筆に籠める方だと窺えます。ぜひ今後のご活躍を。
3月×日 本格ミステリーが盛り上がっている。
「ミステリと言う勿れ」(田村由美著 小学館 1~14巻以下続刊594円)は、テレビドラマ化や映画化されたので目にした人も多いと思います。原作のみならずドラマ版と映画版、特別編を視聴しましたが、たいへん楽しめる作品でした。
主人公が次々と事件に巻き込まれていく日常はレディースコミックのようなテトリス型。次から次へと謎が降ってきます。ややもすれば散文詩になってしまいがちですが、原作の映像化に際して脚本家さんの技巧が冴えています。余分と感じられる台詞や場面を枝打ちし、より楽しめるかたちに仕上がっていたので拍手。
オススメは映画版。「話を聞いてくれない一族」の遺産相続に巻き込まれた主人公の、現代の金田一耕助かと見紛う活躍が楽しめます。
3月×日 還暦を迎えたので記念同窓会が開催されました。150人近い卒業生が42年の時を経てなお60人以上が集まったので仰天。さすが赤い褌で沼津の海を遊泳した知己たちだ。仲間意識が強い。
日刊ゲンダイDIGITALに掲載されているコラムを紹介したら喜んでくれたので素直に嬉しい。
今年は登山を予定しています。体力的にも人生最後となるが、今後に向けた英気としたい。