最後の仕事は「トヨタ」のネームバリューにこだわった
しかし、それでも中村は諦めなかった。続けて元職員は語った。
■皇族が視察
「『愛知太陽の家』設立記念行事として先生は、国際リハビリテーション協会などの協力を得て『第1回国際障害者レジャー・レクリエーション・スポーツ大会』(略称・レスポ)を、蒲郡市を中心に開くことにした。そこで先生はデンソー側に『そのときは、皇太子さまご夫妻(上皇ご夫妻)がご臨席し、デンソー太陽をご視察するかもしれませんよ』と言った。そしたらデンソー側が驚いた。なぜなら親会社のトヨタにさえも皇族はいらっしゃっていないということでね」
さらに中村は、追い打ちをかけるようにこうも言った。
「皇太子さまが見てもわからないような物を造っていたら失礼ではないでしょうか」
結果は、上皇ご夫妻ではなく、常陸宮ご夫妻がレスポの開会式にご臨席し、「デンソー太陽」をご視察したのだった。
その3カ月後、中村は57歳で泉下の人となった。だが、その後も上皇ご夫妻をはじめ、天皇・皇后両陛下、秋篠宮ご夫妻、常陸宮ご夫妻、三笠宮ご夫妻、高円宮ご夫妻が「太陽の家」や、その共同出資会社をご視察している。