貴景勝の7月場所休場で…師弟関係の希薄さまた浮き彫りに
■師匠の強権も一長一短
最終的に親方の判断を受け入れたとはいえ、貴景勝が反発していたのも事実。こうも面と向かって師匠に歯向かった力士も珍しい。確かに千賀ノ浦親方の主張は正論。説得できたからよかったものの、メディアに事細かに「こう言ったけど納得してもらえなかった」と説明することで、逆に「弟子に言うことを聞かせられない」という印象を与えてしまった。さらに言えば、これだけ休むべき理由が揃っていながら、数時間かけないと説得できなかったということでもある。
角界では問題横綱白鵬(34)と宮城野親方(元前頭竹葉山)の関係を見ても、師匠の指導力のなさ、影響力の希薄さは顕著になっている。かつては師匠は絶対的な存在。そんな主従関係が過去の暴力指導につながっていたことも否めないが、こうなると一長一短ではないか。
「弟子は親方の私生活、言動、面倒見など、すべてを見ている。普段、いい加減な親方が稽古場でだけ厳しく指導したところで、誰も言うことを聞きません。現役時代の番付は関係ない。その意味で、今の親方衆は相撲への取り組み方が甘いのではないか。力士数が減った影響か、部屋の運営やひいき筋の接待などが優先され、弟子に割く時間が減っているのでしょう。親方は文字通り、親も同然。弟子を導くために、自分の言葉に説得力を持たせるよう、日頃から相撲と向き合う努力を欠かしてはいけません」(前出の中澤氏)
四方丸く収まったとはいえ、角界における師弟関係の希薄さが浮き彫りになった騒動だった。