稀勢の里を描いた「愚直」の荒井太郎氏に聞く7月場所展望
――本のタイトルにもある稀勢の里の魅力とは何だったのですか。
「やはり、真摯に相撲道に打ち込む姿。本の中でも『モンゴル包囲網』という言葉を使いましたが、白鵬や日馬富士らを相手に、ほぼ孤軍奮闘で正面から正攻法で戦った。まさにタイトルにあるような愚直な相撲ぶりです。それが見ている側にも伝わってきます。取材で私情が入ることは基本的にありませんが、どうしても稀勢の里の相撲は、ぐっと身を乗り出して見てしまう。他の記者も同様だったと思います」
――史上最多の8場所連続休場、横綱として歴代ワーストの勝率5割(6場所制以降)など、成績はひどかったが人気はあった。
「人気や影響力などは、過去の大横綱と比べてもひけをとらない。ファンは数字だけを見ているわけではないんです。土俵上の態度、所作から伝わってくるものを受け取る。成績はその一部分なんです。稀勢の里はその生きざまが、多くのファンの共感を得た。単に19年ぶりに誕生した待望の日本人横綱だからというだけでは、あそこまでの人気にはならなかったと思います」