ハンドボール代表・蒲生晴明氏 全盛期逃した“世界のガモ”

公開日: 更新日:

蒲生晴明さん(ハンドボール代表)

「選手としても、チームとしても絶頂にいたのに」

 3大会連続で五輪の日本代表に選ばれた蒲生氏がこう明かす。

 身長192センチ、92キロの恵まれた体躯を生かしたプレーで、世界得点ランキングの上位に入り「世界のガモ」として名を轟かせた。

■メジャー競技になるチャンスだった

 だが、モスクワの地を踏むことはなかった。

 日本が出場権を得た球技は男子ハンドボールと女子バレーボールの2種目のみ。それだけに世間の注目度は高く、全試合テレビ中継が決まっていた。日本でハンドボールをメジャー競技にするこの上ないチャンスでもあった。

「1978年の世界選手権(デンマーク)では強豪国とも十分に渡り合える手ごたえを感じていました(16カ国中12位)。年齢的にも26歳という一番脂が乗った時期で私の全盛期です。ボイコットの件を聞いた時の気持ちはガッカリや残念など月並みな言葉では言い表すことができません。『本当に出られないのか』という戸惑いも大きかったです。とにかく出場したかった。五輪に出ていれば日本のハンドボール界の状況は今とは違ったかもしれません」

 なかなか気持ちを切り替えられないまま、国内大会をこなしていく中、初めてハンドボールが正式種目となった82年アジア大会(インド・ニューデリー)に挑む。

「大会は室内ではなく屋外で行われ、環境は悪いうえに気持ちも乗りませんでした。しかし、その頃の日本はアジア最強。負けられないというプレッシャーだけは大きくのしかかりました」

 結果は準決勝の韓国戦を1点差で辛勝し、決勝では中国に僅差で敗れ銀メダルに終わった。この結果を受けて監督、コーチが退任し、メンバーも半数近くが入れ替わったという。

「次のコーチや監督が決まらず、メンバーも中ぶらりん。この期間に引退する選手もいました。昔はプロがなく、選手は教員か会社員で、30歳くらいになると、役職が付いたりと仕事が大変になりますからね」

 最終的にロサンゼルス五輪のメンバーが決まったのは、予選大会のわずか半年前。チーム内で満足のいく調整ができないままの見切り発車だったが、予選を勝ち抜き、再び五輪への切符を掴み取った。

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