田中将は「2戦目先発」に 開幕投手を避けた楽天の深謀遠慮
先輩・涌井への配慮
2学年先輩にあたる涌井への配慮もあるようだ。
石井監督は涌井を開幕投手にした理由について、「昨年もしっかりイニングを投げてくれましたし、チームのために一番貢献した投手」と話すなど、あくまで昨年の結果を重視した。前出のOBが言う。
「楽天は田中や涌井だけでなく、岸、則本も開幕投手をやれる実力があるが、石井監督は涌井を『1番手』だと明確にすることで、彼のプライドに配慮したのです。過去9度、開幕投手を務めている涌井は、かねて開幕投手をやりたがっていた。昨季は岸、則本が離脱した時期がある中、1年間ローテを守り、『自分がエース』という自覚もある。見た目はクールに見えて、意気に感じて気持ちで投げるタイプ。ロッテ時代は起用法に不満を漏らすこともあったように、何より本人のモチベーションを高めることが大切ですからね」
■観客動員のテコ入れ
球団の営業面も勘案されたともっぱらだ。
関大名誉教授の宮本勝浩氏は、田中の古巣復帰による宮城県の経済効果を年間約57億1697万円と試算した。
その効果は早速、表れている。楽天は球団ファンクラブとは別に、田中個人のファンクラブである「マー君クラブ」を設立。限定10人とはいえ、会費180万円のVIP会員権は発売開始からわずか14分で完売。1.8万円のコースも早々と定員の1000人に達した。
VIP会員は一般販売されていない特等席で最大5人まで観戦できる「1-Day Premium VIP Ticket」(50万円相当)の招待券が手に入るが、多くの職場や学校が休日にあたる土曜なら、球場に足を運びやすい。仙台の地元関係者がこう言う。
「楽天は観客動員のテコ入れが急務。昨季は1試合平均の動員数が12球団ワーストの4918人にとどまり、苦戦を強いられた。コロナ禍で観客動員が最大5000人の制限が設けられていた時期に“満員”にならないケースもあった。日曜日はどの投手が投げても客入りが期待できるが、土曜日はそうもいかない。18年は土曜の方が観客が入るケースもあったが、19年の1試合平均は日曜の約2万7100人に対し、土曜は約2万6600人と差があった。今季は開幕から5月1日までの6週間で5度、本拠地で土曜開催がある。寒さもあって4月は動員に苦戦する時期ですが、田中が投げれば大入り満員が期待できる。もちろん、田中にとっても、本拠地で多く投げた方がパフォーマンスを発揮しやすいはずです」
いろいろな思惑が重なる田中の開幕2戦目登板は、吉と出るか――。