今年のセンバツに夏まで追い掛けたい野手はいなかった
すぐ横に座っていた部長も同じ意見だ。
「オレはある意味、おまえたちと逆だ。打撃がいい選手、本塁打をたくさん打ってる選手はすぐに評判になるし、他球団の連中も間違いなくチェックする。そんなこともあって、野手はまず、足と肩を見る。オレが試合前のノックから見るのはそのためだ。足や肩は試合だけじゃ判断できないケースが多いからな。足と肩は先天的な要素が強いが、打つ方はプロに入って筋トレなんかで鍛えれば、なんとかなると思ってるんだ」
その肩と足が光った選手はいましたかと突っ込むと、
「う~ん」
と、うなって、こう続けた。
「投手で面白いのは何人かいた。市和歌山の小園、天理(奈良)の達、北海(北海道)の左腕・木村あたりは、追い掛けた方がいい。けど、野手はなぁ……」
そう言ったあと、「ボチボチ、ニコチンが切れるころだろ。たばこを吸ってくりゃいいじゃねーか。さっきから、ソワソワして落ち着かないし……」だって。いくら冷えるからといって、1時間に1回トイレに行くわけないもんな(苦笑い)。
(プロ野球覆面スカウト)