五輪強行開催で自粛解除の感染拡大 人は不公平と損に弱い
「東京五輪の開催は人流増加のトリガーになりうる」
こう懸念するのは筑波大学人間系心理学域の原田隆之教授だ。
開幕まで残り60日を切り、この瞬間も大会組織委のホームページでは秒単位のカウントダウンが進んでいる。
しかし、開催地である東京の状況はどうだ。度重なる緊急事態宣言の延長により、人々は今年に入ってからトータルで丸3カ月以上も我慢を強いられている。28日には、9都道府県に出ている緊急事態宣言が6月20日まで延長された。それも国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長に言わせれば「五輪のために払われる幾つかの犠牲」のひとつなのかどうか。
前出の原田氏は「いま、国民の多くは不公平感を抱えている状況です」と、さらに続ける。
■不平不満は募る一方
「IOC会長や理事たちの失言により、ただでさえ五輪に対し負の感情が高まっています。このまま開催すると、我慢を続けている国民には、『自分たちはお構いなしで好き勝手に五輪をやるのか』という感情が芽生えます。人間は『損』にすごく敏感なので、あの人たちはやっているのに、と思うのは至極当然のこと。今はコロナ禍で会食することに多少の後ろめたさがありますが、五輪開催はこれを中和させる免罪符になる可能性が高い。つまり『五輪だってやっているのだから』という『言い訳』が働くのです。『言い訳』というのは行動の後押しをする強烈な作用があるので、自粛を解除する人が続出するとみています」