著者のコラム一覧
元川悦子サッカージャーナリスト

1967年7月14日生まれ。長野県松本市出身。業界紙、夕刊紙を経て94年にフリーランス。著作に「U―22」「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年 (SJ sports)」「「いじらない」育て方~親とコーチが語る遠藤保仁」「僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」など。

坊主頭の韋駄天FW前田大然がキーマンになる! 古橋&三笘不在の森保Jで飛躍を期待

公開日: 更新日:

前田大然(セルティック/24歳)

「前田大然は、セルティックでもデビュー戦(1月16日のハイバーニアン戦)で開始早々にゴールを決めましたし、昨季Jリーグでも得点王のタイトルを取っている。彼への期待はゴールです」

 1月27日、2月1日のカタールW杯最終予選・中国&サウジアラビア2連戦に向けた22日の代表発表会見。森保一監督は、2度目の欧州挑戦に踏み出したばかりの韋駄天FWをキーマンに指名した。攻撃の切り札である古橋亨梧(セルティック)、三笘薫(サン・ジロワーズ)が不在の中、今回は坊主頭の点取り屋が日本の救世主になるかもしれない。

■離島マデイラ島でのコロナ禍ライフ

 J1だった松本山雅でプレーしていた2019年6月。コパアメリカに参戦した前田大然は、ラストのエクアドル戦終盤に決定機を外して「このままでは東京五輪に出たとしても活躍できない」と痛感。ポルトガル1部・マリティモへのレンタル移籍を決断した。

 同時期に長女・爽世ちゃんが生まれたばかり。日本人居住者が皆無に等しい離島マデイラ島へ赴くことは、勇気のいる決断が必要だったが、家族とともに新天地へ。異国の環境に適応しようと努力した。

 成果も徐々に出始めたが、そんな矢先にコロナ禍に突入。山雅時代から知る筆者に対して彼は「大丈夫です」と言い続けたが、言葉が通じず、いざと言う時に助けてくれる人もいない環境での未知なるパンデミックは、恐怖以外の何物でもなかったはず。

 欧州挑戦を続けたい気持ちも強かったが、「家族の安全が第一」と考え、2020年夏にJ1・横浜への再レンタルに踏み切った。

 そこでポステコグルー監督と出会ったことで、ストライカーとしての才能が大きく開花する。

 2020年こそ3点にとどまったが、翌2021年は開幕からゴールラッシュを披露。最終的に23点まで数字を伸ばし、同年MVPのレアンドロ・ダミアン(川崎)とともに得点王に輝くという大ブレイクを見せた。

これには山雅時代の恩師・反町康治JFA技術委員長も驚きを隠せなかった様子だ。

「大然は確実にシュートがうまくなった。ただ、マリノスでは大然がほしいところにボールが来るのが大きい。山雅時代はいい位置にいてもラストパスが来なかった」と神妙な面持ちで語り、優れた選手がひしめく強豪クラブ移籍が、生粋の点取り屋の嗅覚を開花させたという見方をしていた。

 それはポステコグルー監督体制となったセルティックに移籍したことに関しても言えること。

 冒頭のハイバーニアン戦開始4分に奪った衝撃的な先制弾は、味方が右サイドから絶好のチャンスボールを配球してくれたのを押し込むだけだった。「点の取れる位置に入り込めば点を取れる」という確固たる自信が今の前田から伝わってくる。

地方クラブからW杯戦士に飛躍

 森保日本でもこのような使い方をしてほしいもの。だが、指揮官は前田の有効な起用法をまだ見出しきれていない印象だ。

 東京五輪では左サイドのジョーカーとしてフランス、スペインとの2試合に途中出場させただけ。前者ではダメ押し点を奪ったものの、本人の中では不完全燃焼感でいっぱいだったはず。

 悔しさをバネにJリーグで得点を重ね、11月の最終予選・ベトナム&オマーン2連戦でようやくA代表に招集された。

「五輪では僕を含めて攻撃陣が点を取れなかったので、チームに帰ってからゴールの意識が一層強くなった。ゴールってところを見てもらいたい」と普段はあまり感情を表に出さない前田もギラギラ感を押し出していた。

 ところが、ふたを開けてみると2戦続けてベンチ外。これには本人も落胆が大きかっただろう。

 東京五輪で同じく控えに甘んじた三笘がオマーン戦で伊東純也(ゲンク)の決勝弾をアシストし、強烈なインパクトを残す姿を間に当たりし、関西人の負けん気の強さが呼び起こされたに違いない。

 森保監督も三笘、古橋が不在となれば、次こそは前田に目を向けるに違いない。最終予選突入後は1点差勝利のみという得点力不足解消のキーマンとして、坊主頭の韋駄天がブレイクできれば代表定着はもちろんのこと、カタールW杯への道も大きく開けてくる。

 山雅という地方クラブでプロキャリアをスタートさせた男がW杯戦士へと飛躍すれば、応援していた人々を喜ばせることもできる。山雅、横浜のサポーターの思いも背負って、前田にはゴールに突き進んでもらいたい。

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