アーチェリー銀メダル山本博さんは今年還暦 それでもパリ五輪に挑むモチベーションとは

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「五輪をめざすなんて堂々と言えるのはスポーツだけ」

 山本さんの活躍で注目されるようになったアーチェリーだが、まだまだマイナースポーツ。しかしアマチュアであることで、「長く続けられている」と山本さんは言う。

「僕がもしプロ野球やプロサッカー選手だったら、『おまえのプレーなんて金を払ってまで見たくない』と言われた瞬間に解雇です。しかし僕は教員という食い扶持を持っているので、辞めるか辞めないかのジャッジは自分で下すことができるんです。企業もそうですよね。富士フイルムのように写真がアナログのフィルムからデジタルデータに移行しても生き残っていられるのは、本業以外の分野でしっかり稼いでいるから。実はアーチェリーも最近はプロ化が進んでいて、会社には属しているけど仕事はしていないという選手が増えています。競技の発展という点では喜ばしいですが、もしもの時を考えると心配ですね」

 それにしてもである。先日行われた「全日本社会人ターゲットアーチェリー選手権大会」では壮年の部で見事優勝した山本さんだが、還暦にしてパリ五輪をめざすモチベーションはどこからくるのか。

「引退が一番楽なんですよ。数年前には絶対負けなかった選手に、今は負けているわけですから。自分でも惨めですが、でもいつか『あの時耐えて良かったな』と思える予感がするんです。あと、スポーツだけなんですよ。オリンピックをめざすなんてバカげたことを堂々と言えるのは。そういう非現実なものに立ち向かうといった遊びの部分は、最後まで持ち続けたいですね」

 ナショナルチームの選考会は今年11月。世界へのカムバックへの第一歩となる試合だ。山本さんの人生をかけた一射に注目である。

(取材・文=いからしひろき)

山本博(やまもと・ひろし) 1962年、神奈川県出身。日本体育大学在学中にロサンゼルス五輪で銅メダルを獲得。2004年開催のアテネ五輪ではロサンゼルスから20年ぶりに銀メダルを獲得。オリンピック5大会に出場。現在も現役選手として活躍する他、日本体育大学教授・博士(医学)、東京都体育協会会長、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会顧問会議顧問も務める。

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