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武田薫スポーツライター

1950年、宮城県仙台市出身。74年に報知新聞社に入社し、野球、陸上、テニスを担当、85年からフリー。著書に「オリンピック全大会」「サーブ&ボレーはなぜ消えたのか」「マラソンと日本人」など。

全仏オープン欠場のナダルは来年の大会でお別れ…パリ五輪の“アンコール”で世代交代か

公開日: 更新日:

■「メンタルは練習で鍛えるものじゃない」

 ナダルの足跡は、昨年引退したフェデラーに劣らない。

 テニスが全天候型のハードコートを中心に世界ツアーを構築した一方で、全仏を頂点とするクレーコートはラリーが長々と続くために人気がなかった。ハード偏重で人気薄だったヨーロッパのクレーコート・テニスをナダルが蘇らせた。

 ウィンブルドン初優勝は08年だが、かつてはスペイン選手権(クレー)が同じ時期に開催されていたほどサーフェスの壁は高かった。5月のパリから、じわじわと6月末のウィンブルドン(芝)、8月末の全米(ハード)へと戦略的に壁を崩しながら、メジャー通算22勝、ジョコビッチと並ぶ歴代記録を打ち立てた。

 コート上でペットボトルのラベルを神経質に正面に向ける癖は知られている。理由はスポンサーへの敬意。来日した折に、テレビ局が企画で和菓子を食べさせようとした。何度説明されてもニコニコ笑いながら「ノン」と口にしなかった。ドーピングの恐怖を知っていたからだ。鉄のメンタルといわれたが、会見で「メンタルトレーニング」について聞かれると怪訝な顔で何度か聞き返し、こう答えた。

「メンタルはトレーニングで鍛えるものじゃないですよ」

 真のプロフェッショナル、ナダルの不在は本当に寂しい。

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