すべての仕事をする人に「プロの姿勢」を教える名著
読めば読むほど百田氏がさくらさんに都合の良いように利用された感が出て嘆息するとともに、「これぞノンフィクション」と思わせるディテールの細かさや証拠集めの緻密さに舌を巻く。圧巻は、たかじんさんが母校・桃山学院の校長・温井史朗氏にあてたとする「温井メモ」の偽装工作を検証するシーンである。温井メモは、桃山学院に遺産を寄付する旨を明記しているのだが、さくらさんの生活が困るようであれば、温井氏からさくらさんに戻すよう、たかじんさんが指示しているのだ。メモの矛盾点を突くとともに、筆跡鑑定まで行いこのメモがたかじんさんによるものではないと結論づける。
H氏やK氏の名誉回復のためには、徹底的にさくらさんに関する疑問を提示しまくってやるぞ、オラ、という執念というか、お岩さんもビックリの怨念を文中から感じ、途中からオレは自分が恥ずかしくなってしまった。
というのも、日々、自分がやっている仕事は安易というか、ここまで執念を持っているだろうか……オレはここまで魂を削って仕事をしていない……と思わされてしまったのだ。同業者だからこそこう強く思うものの、仕事をするすべての人に本書は「プロの姿勢」を教えてくれるだろう。★★★(選者・中川淳一郎)