侵略戦争の責任を裁かないニッポン人の罪

公開日: 更新日:

 こう嘆く辺見は「もの食う人びと」で紀行文学大賞を受けた時、選考委員で辺見の受賞に強く反対した阿川弘之から、元慰安婦のことを書いた最終章はつまらない、と罵倒されたという。

 先日亡くなった阿川は文化勲章受章者だった。元慰安婦たちに、死にたきゃ死ねよ、と言えるような阿川に勲章と終身年金を与える国だと、辺見はニッポンを指弾する。

 よく、「いつまで謝罪させられるのか」と言った声が若い人たちからも聞かれるが、A級の戦争犯罪を問われた岸が、それを免れ、ついに首相になったことが、すなわち、謝罪していないということなのである。形だけ謝ったふりをしていることは、岸の孫の安倍晋三が、「国策を誤り」という文言を入れて真摯に謝罪した「村山談話」を受け継ぎたくないと主張したことでも明らかだろう。岸が首相にならなければ、孫の安倍が首相になることもなかった。それをゆるしてしまったニッポン人の罪も、この本は鋭く問うている。★★★(選者・佐高信)

【連載】週末オススメ本ミシュラン

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    無教養キムタクまたも露呈…ラジオで「故・西田敏行さんは虹の橋を渡った」と発言し物議

  2. 2

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  3. 3

    吉川ひなのだけじゃない! カネ、洗脳…芸能界“毒親”伝説

  4. 4

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  5. 5

    竹内結子さん急死 ロケ現場で訃報を聞いたキムタクの慟哭

  1. 6

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 7

    木村拓哉"失言3連発"で「地上波から消滅」危機…スポンサーがヒヤヒヤする危なっかしい言動

  3. 8

    Rソックス3A上沢直之に巨人が食いつく…本人はメジャー挑戦続行を明言せず

  4. 9

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 10

    立花孝志氏『家から出てこいよ』演説にソックリと指摘…大阪市長時代の橋下徹氏「TM演説」の中身と顛末