「人魚の眠る家」東野圭吾著
主人公・播磨薫子は、瑞穂と生人という2人の子を持つ母親。障害者支援機器の分野で注目を浴びるハリマテクスの社長・和昌と結婚したが、和昌の浮気をきっかけに別居し、瑞穂の小学校受験が終わったらすぐに離婚すると決めていた。
そんなある日、瑞穂がプールで溺れて意識が戻らないという事故が起こる。瑞穂は、プールの排水口に突っ込んだ足が抜けなくなり、発見されたときには心臓も止まっていたのだ。蘇生によって心臓は動き出したものの、脳が機能している様子はなく、改善の見込みはないという。激しいショックを受けた薫子と和昌に対して医師は、脳死判定を受けるかどうかを静かに尋ねる。このまま脳死判定は受けずに自然にまかせて心臓が止まるのを待つか、脳死判定を受けて臓器提供を申し出るか。選択を迫られた薫子と和昌の決断は……。
「秘密」「祈りの幕が下りる時」など、ヒット作を連発する人気作家の最新作。医療技術を駆使して延命することが可能になったとき、大切な人の命の線引きを自分がしなければならなくなったとき、人はどんな決断ができるのかという問題提起が興味深い。(幻冬舎 1600円+税)