「日本人はどこから来たのか?」海部陽介氏
明石原人が日本人のルーツといわれたのは大昔。今や教科書にも載っていません
日本人の祖先は明石原人である――。学生時代に、授業でそう教わった諸兄は多いのではないだろうか。しかし――。
「違います。かつて日本人のルーツなどといわれた明石原人は、その後の調査で歴史時代の人の骨と見誤ったことがわかり、とっくの昔に教科書からは消えています。現在でも日本では原人や旧人の化石がひとつも見つかっていませんし、そもそも遺伝子的にも原人と我々ホモサピエンスとは異なっています。では、日本人はどこから、どのようにしてきたのか。それが本書のテーマです」
私たちの祖先であるホモサピエンスは、アフリカの旧人から進化し、世界中に広がったことが分かっているが、その移動については謎が多い。
欧米の学会では、10万年前にアフリカを出たホモサピエンスはアジアの南側の海岸線沿いを移動し、オーストラリア大陸へ至ったという「海岸移住説」を支持している。ところが、沿岸の移住を裏付ける古い遺跡は見つかっていない。
■ヒマラヤを超えてきた日本人の祖先
このことに疑問を抱いた著者は考古学、DNA研究、世界各地の信用に足る遺跡の証拠など過去10年間の研究を一枚の地図に落とし込み、グローバルな視座から再検討した。