「母の恋文」下重暁子著
ベストセラー「家族という病」で、母親の自分に対する執着や父親との確執を明かし、家族との関係を見つめ直した著者。その後、母が結婚前に陸軍の武官として中国に赴任中の父と交わした手紙が見つかったという。その手紙を紹介しながら、知られざる両親の関係と、家族について改めて考えたエッセー。
両親はともに再婚で、母の叔父の紹介で結婚が決まったが、文通が始まったときにはまだお互いに会ったこともなかった。母は死別した前夫との結婚生活をはじめ、包み隠さず手紙にしたため、文通を重ねるごとにまだ見ぬ夫への思いを募らせていく。そんな情熱的な母の手紙に戸惑いながらも、著者は自分が母の強い意志のもとで生まれてきたことを知る。(KADOKAWA 1000円+税)