「五〇年酒場へ行こう」大竹聡氏

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 ほろりとさせる人情話もあれば、思わず噴き出す軽妙洒脱なやりとりも。

 たとえば赤羽の大衆酒場「まるます家」の石渡勝利さんは、まるで落語家だ。

「江戸弁風をしゃべる人で、まあ小気味いい。言葉が洒落ていてね、もはや寄席状態。50年以上、店を守る大将の人柄や面白さ、その場に交ぜてもらう楽しさが伝われば」

 著者自身、酒呑みの英才教育は父親から受けたという。その父が連れて行ってくれたのが新宿西口界隈の酒場だった。

「父はいろいろな意味で人生がうまくいかない人で、僕が12歳のときに出奔しました。でも、成人したころにはたまに会って酒場へ連れて行ってくれました。新宿の大人たちの間で呑む経験、それが酒の覚え初め。今これで飯を食ってると思うと、父には世話になったなあと。随分苦労をかけられたけれど、草葉の陰で喜んでいると思いますよ」

 父親とともに訪れた酒場「ボルガ」は今も健在で、今回の取材でも訪れている。

「五〇年酒場の多くが、客が息子や娘、甥や姪を連れてきているんですよね。あるいはそこで出会ったふたりが赤ん坊を連れてきたり、3代で通い続けているなんて話がぼろぼろあるんですよ。つまり、五〇年酒場とは誰かを連れて行きたくなる店なんです」

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