アメリカ社会に激震 米大統領で本当に負けたのは誰か?
■リベラルの敗北
あまりに意外な結末に終わった米大統領選。でも負けたのは本当は誰なのか。敗者はヒラリーだが、実はリベラルも保守も、メディアまでもが総くずれで負けたのではないか。
まずリベラルの敗北については渡辺将人著「アメリカ政治の壁」(岩波書店 860円+税)。「オバマの8年がなぜ期待通りにいかなかったのか」を一般向けに解き明かした好著です。
民主党が大勢力になったのはニューディールの大不況時代だが、経済だけを軸に南部白人、カトリック、労組、アフリカ系などばらばらの集団をひとまとめにしたニューディールは典型的な「利益の政治」で、その弱者救済には実は「理念」はなかった。それゆえ60年代の公民権運動やフェミニズムなど「理念」優先の運動が広まるにつれて民主党のリベラリズムは急速に分裂してしまいました。
著者は元テレビ記者で、民主党の大物女性議員事務所で働いた経験もある若手政治学者。現場を知る立場から、サンダース支持者の弱点(後述)なども指摘しています。