「偏見」は異なる集団間の接触で減少する…寛容さを向上
「World Happiness Report」という世界各国の幸福度ランキングを伝えるリポートがあります。2024年、日本の幸福度ランキングは51位でした。このランキングでは、「1人当たりGDP」「社会的支援」「健康寿命」「人生の選択の自由」などの項目から幸福度を算出しているのですが、その中に、「他者への寛容さ」という項目があります。
日本は、「他者への寛容さ」に関してだけで言えば、129カ国中122位と極端に下位に沈んでいます。もっとも「他者への寛容さ」は、直近1カ月における慈善団体への寄付によって測定されているため、私たちが考える「寛容さ」とは異なるニュアンスとも言えます。しかし、他国から見れば、寄付や募金に対する意識の低い日本は、「寛容さが低い」と映るわけです。
たしかに日本人は、「寛容さ」に厳しいと感じることが、少なからずあります。例えば「失敗」。日本社会は一度失敗した人に対して、セカンドチャンスを与える機会が少なく、そもそも挑戦よりも維持を選ぶ企業も少なくありません。
一方、欧米、特にアメリカでは、失敗を成長の一部と捉える文化が根付いています。シリコンバレーのような環境では、失敗を恐れずに新しいアイデアを試みることが奨励され、失敗から学ぶことが成功につながると考えられています。
他者に寛容になれない背景のひとつに、「偏見」があります。一度失敗した人に対して、再度チャンスを与えないのは、「あの人は失敗した人だから」という偏見があるからでしょう。また、社会的に弱い立場にいる人に対して、「どうせ分からないだろう」といった決めつけとも言える偏見は、日本のいたるところに存在しているはずです。
言い換えれば、偏見というバイアスを軽減させていくことができれば、寛容さは向上させられる。これは社会や組織にとってとても大切なことです。
異なる集団間の接触が偏見を減少させ、相互理解を促す「接触仮説」と呼ばれる理論があります、1954年に、心理学者のゴードン・オルポートが提唱したもので、異なる集団間の適切な接触が、互いに対する偏見や敵意を軽減し、より良好な関係を築くことができるというものです。
オルポートは、効果的な集団間接触のためには、次の4つの条件が重要だと唱えてます。①平等な地位(接触する集団間に平等性があること)②共通の目標(集団同士が共通の目標を持ち、それに向けて協力できる関係性であること)③協力関係(競争ではなく、協力的な相互作用があること)④権威からのサポート(集団間の接触を支持する法律、慣習、環境などがあること)──。これらの条件が満たされると、より効果的に偏見を減少させると考えられています。
互いに相いれないような関係にあるとき、人は偏見を含めたバイアスがかかることで、正常な判断ができづらくなります。それを解消するには、上記の4つ……全ては無理だとしても、②や③をつくり出せるように整備・調整することが肝要なのです。
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