アメリカ社会に激震 米大統領で本当に負けたのは誰か?
冒頭に紹介した「アメリカ政治の壁」は、アメリカのメディアの特質をこう分析しています。
第1にメディアは「争いごとを好む」。仮想敵だらけのトランプ論法に、あきれたふりをしながら乗ってしまった理由がこれです。第2は「短く分かりやすい言葉を好むメディアの特性」。これ、記者なら覚えがあるでしょう。第3は「ニュースを『落とす』ことに過敏」な体質。第4は「イベントの予定」で取材と放送が決まってしまうメディアの慣習。トランプはそこにわざと遅刻して衆目をひきつける。そして第5が「独占取材」に弱いこと。
トランプは集会のもめごとをリベラルメディアに大々的に報道させつつ、保守系のFOXニュースに独占出演して「自分の言い分だけ」を長々放送させた。そして、結局メディアは指をくわえてトランプ劇場を見守ったわけです。
こうしたメディアの特質はアメリカ庶民の肌感覚と呼応するものです。「バーニー・サンダース自伝」(大月書店 2300円+税)を読むと、彼自身、ブルックリンの下町のユダヤ人街に生まれた労働者階級の庶民の出であることがよく分かります。そういう人たちの肌感覚と実直な生き方を、エリート化した民主党の上層部とメディアが見逃してきた、とサンダースが語った動画もネットにアップされています。
ただ問題は、若いサンダース支持層は大統領選のような大イベントにしか燃えず、地方の政党政治にじっくり取り組む姿勢がないことです。共和党のロン・ポールのような保守系リバタリアンの支持者よりも取り組みに見劣りしたといいます。このあたり、日本の若者や「気持ちだけは若い」団塊世代にとっても、単なる他山の石という以上の課題ではないでしょうか。
マイケル・ムーアが新作映画「トランプランド」でいいことを言っています。「見くびるな、きみの敵はきみ自身の心の中だ」と。