青沼陽一郎
著者のコラム一覧
青沼陽一郎

作家・ジャーナリスト。1968年、長野県生まれ。犯罪事件、社会事象などをテーマに、精力的にルポルタージュ作品を発表。著書に「食料植民地ニッポン」「オウム裁判傍笑記」「私が見た21の死刑判決」など。

覚醒剤逮捕はなぜ男女一緒が多いのか

公開日: 更新日:

「薬物とセックス」溝口敦著 新潮社 720円+税

 2016年も暮れようとしているが、今年はやたらと著名人の薬物犯罪が目立った。2月の清原和博の覚醒剤逮捕に始まり、6月には高知東生、10月には高樹沙耶が大麻で、11月はASKAが再逮捕。今月に入って成宮寛貴のコカイン吸引疑惑が報道され、芸能界引退を発表している。

 なぜ、彼らは違法薬物に染まっていくのか。

 本書は、その多くが男女一緒で逮捕されていることに注目。高知東生もASKAも愛人と、過去には酒井法子や小向美奈子も、夫や男と一緒に逮捕されている。これは、覚醒剤によってセックスの快楽を増進させる、俗にいう「キメセク」に使用目的があるのではないか。

 逮捕時にひとりだった清原も、内情を知る関係者が「キメセク」についてこう暴露している。

〈ローションでお尻を湿らせた後、粉末状の覚醒剤をすくい取り、自分の尻の穴にねじ込むんだ。「こうすると下に直接効くんだ。非常によく効く」と話していました。彼は私が知っていると思っていたのか、「ケツ入れしてへんの?」とびっくりされました。〉

〈「アレ(覚醒剤)を使ってセンズリしたら、止まらんようになってしもたぞ」

 見ると右の腕がパンパンに腫れていた。それでバットが振れないといって、本当に試合を欠場してしまったんです。〉

 しかしながら、暴力団など裏社会に精通する著者の追究によると、男女差があることがわかってくる。覚醒剤によって男性は射精がのびたり、困難になる一方、女性はまた違うようだ。本書には、その経験談の引用も多いが、その後の慢性中毒の実態も惨憺たるものだ。

 ASKAは先週、嫌疑不十分で不起訴処分となったが、再逮捕のきっかけは「盗撮されているので確認してほしい」という110番通報だった。盗撮や盗聴、監視を疑うのは、まさに「注察妄想」と呼ばれる薬物使用の後遺症と合致している。

 暴力団のシノギにしかならない覚醒剤。清原の逮捕時には安倍首相も「残念」と国会答弁していたように、あまりにも本人に同情、社会復帰を望む声が多く報じられた。そうした薬物犯罪に甘い日本の社会体質が根絶を困難にさせている。

【連載】ニッポンを読み解く読書スクランブル

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    愛川ゆず季が告白「長男の自閉症を隠していたわけじゃない。でも言葉にすごくパンチがあって…」

    愛川ゆず季が告白「長男の自閉症を隠していたわけじゃない。でも言葉にすごくパンチがあって…」

  2. 2
    西武激震!「松井監督休養、渡辺GM現場復帰」の舞台裏 開幕前から両者には“亀裂”が生じていた

    西武激震!「松井監督休養、渡辺GM現場復帰」の舞台裏 開幕前から両者には“亀裂”が生じていた

  3. 3
    中居正広「脱SMAP」成功の裏に“懐刀芸人”あり 自身が仕切る番組の「裏回し」任せ巧みに延命

    中居正広「脱SMAP」成功の裏に“懐刀芸人”あり 自身が仕切る番組の「裏回し」任せ巧みに延命

  4. 4
    愛川ゆず季が2歳で長男の自閉スペクトラム症を確信した“逆さバイバイ” ネット検索で不安のループに…

    愛川ゆず季が2歳で長男の自閉スペクトラム症を確信した“逆さバイバイ” ネット検索で不安のループに…

  5. 5
    元横綱・白鵬に「伊勢ケ浜部屋移籍案」急浮上で心配な横綱・照ノ富士との壮絶因縁

    元横綱・白鵬に「伊勢ケ浜部屋移籍案」急浮上で心配な横綱・照ノ富士との壮絶因縁

  1. 6
    1場所4人じゃ終わらない…元横綱白鵬の旧宮城野部屋勢“廃業ラッシュ”はこれからだ

    1場所4人じゃ終わらない…元横綱白鵬の旧宮城野部屋勢“廃業ラッシュ”はこれからだ

  2. 7
    石原裕次郎(13)慶応病院に入院…同乗したエレベーターを降りる際に掛けられた言葉

    石原裕次郎(13)慶応病院に入院…同乗したエレベーターを降りる際に掛けられた言葉会員限定記事

  3. 8
    松井稼頭央監督とは対照的…西武“連勝”渡辺監督代行が見せた「芯ある采配」

    松井稼頭央監督とは対照的…西武“連勝”渡辺監督代行が見せた「芯ある采配」

  4. 9
    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  5. 10
    “超ハイスペ外国人芸人”アイクぬわら 共演未成年少女「自宅連れ込み」で芸能界から退場か

    “超ハイスペ外国人芸人”アイクぬわら 共演未成年少女「自宅連れ込み」で芸能界から退場か