「どうしても欲しい!」エリン・L・トンプソン著、松本裕訳
マルクス・アグリッパは、自分の使っている温泉の正面に据えるようにと、男性の裸体像「アポクシュオメノス」を寄贈した。ローマの皇帝ティベリウスはこの銅像を特に気に入り、なんと自分の寝室に移してしまった。だが、民衆が劇場で激しい抗議の声を上げたため、返さざるを得なかった。ティベリウスの寝室は窓がなかった可能性が高いから、暗いランプの明かりのゆらめきで、銅像はより魅力的に見えたかもしれない。ティベリウスは引退後はカプリ島で美少年をはべらせて暮らしたという。
美術犯罪の研究者が、美術品に魅せられて収集したり、盗んだり、贋作を作ったりした悪名高い美術愛好家たちの闇の歴史を掘り下げる。
(河出書房新社 2400円+税)