「バルス」楡周平著

公開日: 更新日:

 有名私大の4年生、百瀬陽一は狙っていた大手8社すべて最終面接ではねられてしまう。大企業を諦めきれない陽一は就職留年を決意。就職戦線が始まるまでの間、ネット通販会社スロットの流通センターでバイトをすることにした。

 そこで陽一が目にしたのは、厳しいノルマ、安い時給、いつ解雇されるかわからない不安定な環境……派遣労働者の過酷な現実だった。

 派遣を代替可能な労働ロボットとみなすスロットに対して、陽一は激しい怒りを感じる。その怒りに呼応するように、「バルス」と名乗る人物がネット通販の大動脈である宅配網にテロを仕掛けた。このテロによって宅配会社は荷物の受け付けを中止し、国内流通は大混乱に陥る。

 さらに非正規労働者の待遇改善を訴える「バルス」に多くの人が賛同し、国会を巻き込む大きな運動に盛り上がっていく――。

 配送料無料、即日配達といった現代社会の便利さが、実は非正規労働者の過酷な労働環境の上に成り立っていることを暴き出した問題作。

(講談社 1650円+税)


最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    菊川怜の元夫は会社が業績悪化、株価低迷で離婚とダブルで手痛い状況に…資産は400億円もない?

  2. 2

    粗製乱造のドラマ界は要リストラ!「坂の上の雲」「カムカムエヴリバディ」再放送を見て痛感

  3. 3

    ヤンキース、カブス、パドレスが佐々木朗希の「勝気な生意気根性」に付け入る…代理人はド軍との密約否定

  4. 4

    綾瀬はるか"深田恭子の悲劇"の二の舞か? 高畑充希&岡田将生の電撃婚で"ジェシーとの恋"は…

  5. 5

    斎藤元彦知事ヤバい体質また露呈! SNS戦略めぐる公選法違反「釈明の墓穴」…PR会社タダ働きでも消えない買収疑惑

  1. 6

    渡辺裕之さんにふりかかった「老年性うつ」の正体…死因への影響が報じられる

  2. 7

    水卜ちゃんも神田愛花も、小室瑛莉子も…情報番組MC女子アナ次々ダウンの複雑事情

  3. 8

    《小久保、阿部は納得できるのか》DeNA三浦監督の初受賞で球界最高栄誉「正力賞」に疑問噴出

  4. 9

    菊川怜は資産400億円経営者と7年で離婚…女優が成功者の「トロフィーワイフ」を演じきれない理由 夫婦問題評論家が解説

  5. 10

    火野正平さんが別れても不倫相手に恨まれなかったワケ 口説かれた女優が筆者に語った“納得の言動”