「ルポ『8050問題』」池上正樹著
「8050問題」とは、80代の親が収入のない50代の子の生活を支え、助けを求めようとせず、孤立している世帯を指す。行政の支援が届かないまま、親が先に死に、そのまま子も死んでしまう事件や、親の死を受け入れられない、あるいはどうすることもできない子が遺体を放置して逮捕されてしまう事件などが相次いでいる。経済的観点から見ると、周囲には生活に問題がないと判断され、支援の対象になりにくい。しかし、著者は将来の予防的な観点が見落とされていると指摘する。北海道からたびたび上京してひきこもる55歳の息子の面倒と生活費、ローン返済まで負担している80代の老夫婦など。さまざまなケースを紹介しながら、その実態を伝え、支援のあり方、社会のあるべき姿を問う問題提起の書。
(河出書房新社 840円+税)